『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること』 ニコラス・G・カー
ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること
ニコラス・G・カー
青土社
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  書籍名の通り、インターネットをしすぎるとバカになるという内容の警告書だ。

 普段ネットを閲覧していてなんとなくその功罪を自覚している人も多いと思うが、WEBの世界には、新鮮で、多様性があり、奥深さもある情報が溢れており、それらは非常に有益であるが、ネットに依存し過ぎると脳の方に問題をきたし、人間性にまで影響を及ぼすと言うのだ。
 それらの問題について様々な実験データなども踏まえて述べられているのだが、特に印象深かったのが、第七章の「ジャグラーの脳」。
 この章の中で、脳内で作動記憶から長期記憶へと情報を移し替える流れを、細い管とバスタブを用いて例えられている。それを私なりの解釈で図解してみた。
ネット・バカ-読書

読書の場合は、読むペースを変えれば、情報が入ってくる速度をコントロールできる。なるべく全ての情報を長期記憶へと移し替えることも可能だ。

ネット・バカ-ネット

 ネットの場合は、とにかく蛇口(情報の出どころ)が多い。それらはページ上に貼られた数々のパーマリンクや広告、画像、動画 などに加え、アラートやメールなども含まれるだろう。
 とにかく蛇口の多く、情報がどっと押し寄せてくる、他の蛇口に気を取られているあいだに重要な情報は細管から溢れていってしまう。 
 また長期記憶へと運ばれた情報も、混ぜこぜのもので、ひとつの水源からの連続して流れではないので、既存の長期記憶との関連付けも難しく、情報をスキーマ(体系的図式)に翻訳できない。
 脳には再配列の負荷が生じ(切り替えコスト)、 精神機能にも負担がかかる。重要な情報の見落としや、誤った解釈につながる。
 私の経験としても、ネットで読んだ情報よりも、書籍から得た情報のほうが記憶に定着していると思う。

 インターネットの便利さに慣れてしまうと、その有益さを評価してしまい、離れることが出来なくなるが、実は長期的に見ると本当に有益な情報は得ていないのかもしれない。そもそもネットは新しい情報あるいは刺激的な情報に価値を置き過ぎるので、不変の真理や、本質的な情報を軽視しがちである。

 この図式を頭の片隅においておくだけでも、ネットに没頭すること無く、一定の節度を持って接するよう気をつけることが出来るだろう。

 そして、さらに本質的なことは、書籍『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること 』を読んで、しっかり血肉として戴きたい。